独立前に行ったマンションの1室をリノベーションするプロジェクト。
自らが住むことになった部屋を自らの手で改修した。

鹿児島市内、市役所からほど近い場所にある名山町には、賃貸物件でありながら一風変わったコンセプトを掲げた建物が存在する。

仕事が縁で知り合った「レトロフト千歳ビル」

自らもデザイナーであるオーナー夫妻は、若手のクリエイター達に改修可能な部屋を提供し、自由な発想で手を加えてもらうことで行うリノベーションに取り組んでいる。対象となる範囲は広く、通常の賃貸では考えられないほどの自由さがある。

こうした建物との出会いに対し、真摯に向き合いたいと考えたことから「自分が出来ることは全てやろう」と決意。設計はもちろんのこと、貸主側が負担する設備関連の工事を除いた全ての工事を1人の力で行った。

どうすれば部屋に上手く合わせられるか、そんな通常の賃貸において住み手が悩まされるはずの問題がこの建物には存在しない。改装自由という条件の下では、普段の設計時と同じように部屋を如何に住み手に合わせられるかが主なテーマとなった。

そんな問いに対して出した答えは「自身のライフスタイルをそのままプランに落とし込む」というシンプルなもの。これまでの一人暮らしで感じていた自己管理の難しさや生活の癖など、日常の出来事や問題点が考察する際のヒントとなった。

まずは既存の天井や間仕切りを解体し、空間としての容量を確保する。その上で日常の管理が行き届かない不要な床は切り取り、多目的に使える土間に用途を変更した。そんな土間を動線の軸に据えることで室内を「寝室エリア」と「生活エリア」に緩やかにゾーニングした。一体的な空間においても「移動」という行為に少しの制限を加えることで、曖昧になりがちな生活範囲とエリア毎の役割を明確化することが出来た。

海外の雑誌に憧れて青く塗装した壁面と、奥に行くにつれて次第に幅が狭くなる不整形な平面が相まって、限られた面積の中でも一種の非日常感が感じられる空間となった。

計画地：鹿児島県鹿児島市名山町
用途：住居 / マンションリノベーション
面積：27.15㎡
設計施工期間：2010.2〜2010.12

URL：レトロフトチトセ

2021.10

レトロフトチトセ 36